コロンビアのストリートを走ったら警備員4-5人と犬4-5匹に包囲された

中南米

2018年2月某日。様々な偶然が重なった出来事が起きた。

その日の夕方、日本の別の大学から留学に来ていたTと、偶然もあって近所の喫茶店にいた。

Tは用事か何かで先に帰っていったのだが、しばらくして戻ってきた。忘れ物をしたらしい。

そして再び帰っていくTは「暗くなったら危ないから気を付けてね」的なことを言い残していった。なおTは前年の8月から留学していたので、このあたりの事情に色々詳しい。

18時過ぎ、少し暗くなった頃、喫茶店を出て、ふと走りたい衝動に駆られた。

「”危険”に触れる時間を短くしよう」という気持ちもあった。

それは、Tの言葉が少しだけ頭に残っていたことも関係していた。

私は走るのが好きで、よく走る機会を求めていた。

例えば授業や電車に間に合うか微妙なときなどは、逆に「これは走らざるを得ないチャンス」などと捉え、嬉々として走っていたものだった。

住んでいる寮まではせいぜい数百メートルしかない。

その道のりを、全力の90%くらいのスピードでいきなり走り始めた。

走り始めて15秒ほど経った頃だろうか。

後ろからレトリバーのような黒くゴツい犬が追いかけてきていることに気が付いた。

その犬の首輪に取り付けられたヒモを、警備員が必死に掴んでいる。

「走っているモノを追いかけたくなる犬の習性」
「それをなんとか抑えようとしている警備員」

大方そんなところだろう、と思いながら、そのままのペースで走り続けた。

何か大きめの叫び声が聞こえた気がしたが、走っていることにより、風が大きな雑音となって、よく聞こえない。

寮のすぐ近くに辿り着いたとき、私は気が付けば4-5人ほどの警備員と、それぞれが連れたデカい犬に囲まれていた。

犬が私に飛びかかるようにして肉球で勢いよくプッシュしてくる。警備員が慌ててリードを後ろに引っ張る。本気で噛まれると思った。

両手を挙げるように指示され、荷物を点検される。

窃盗犯系の不審人物と思われたようだ。

周りには人だかりができていて、皆こちらを見つめている。

私自身は自分が不審人物でないことを分かっているので、その状況に笑いが込み上げてきた。

学生証をチェックされ、なぜ走っていたのか尋ねられた。

「走るのが好きだから」ー事実だ。

5-10分くらいで解放された。

なお、警備員たちには顔を覚えられ、それからというものしばらくの間は、寮の職員含む彼らに出くわすたびに「走ったらダメ!」と冗談っぽく声をかけられるようになった。

厳つい犬付き警備員がそれだけたくさん同じ場所にいるという事実が、その辺りの治安の悪さを物語っている。

実際にその近所でナイフを突きつけられるなどして強盗された、もしくはされかけた人が周りにも4人はいる。のちに私もその近くで軽い被害に遭うことになった。

ちなみに、5月には夜道を早歩きしただけで「なんで走っていた?」と警察官に職務質問された。ボゴタ(首都)の街、いやそれに限らず大抵の街では、普通にゆっくり歩くのが無難だろう。あるいはランナーの格好であればまだいいかもしれない。

 

なお、この話には続きがある。

警備員らに解放され、野次馬たちは解散する。すぐそばのベンチに座っていた学生たちに声を掛けられた。

「なんで走ってたの?」と尋ねられたことに始まり、いくらか雑談を交わした。

彼らに別れを告げ、部屋に戻ろうとしたとき、同じく近くに座っていた別の2人組に声を掛けられた。彼らは、他大学の学生だった。

まだ2月。留学開始後1ヶ月ほどしか経っていなかったので、大したことは喋れない。

しかし、何とか色々話しているうちに打ち解け、それから寮の共有スペースで一緒に卓球をするなどして遊んだ。

その後も、彼らの仲間たちも交えて一緒に飲みに出かけたり街を回ったり映像制作を手伝ったり、休暇中にはベネズエラとの国境近くにある彼の実家に1週間ほど滞在したり、5ヶ月後に再訪したり、彼の仲間と一緒にパラグライディングをしに出かけたりと、関係が続いた。

あのとき走って良かったなあ。

ただのいい話でした。

2018.08

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