コロンビアの労働環境や最低賃金

中南米

2017年、国際労働組合総連合の調査で「世界で最も労働環境が酷い国」が発表された。

そのとき選出された10か国の中には、コロンビアも含まれていた。

コロンビアは世界で最も「労働環境が酷い国」 悲惨な実情 – ライブドアニュース

実際に国際労働組合総連合のホームページで、その報告におけるコロンビアに関する情報を見てみると、

The number of countries in which workers are exposed to physical violence and threats increased by 10 per cent (from 52 to 59 countries) and include Colombia, Egypt, Guatemala, Indonesia and Ukraine.

Unionists were murdered in 11 countries, including Bangladesh, Brazil, Colombia, Guatemala, Honduras, Italy, Mauritania, Mexico, Peru, the Philippines and Venezuela.

The report ranks the ten worst countries for workers’ rights in 2017 as Bangladesh, Colombia, Egypt, Guatemala, Kazakhstan, the Philippines, Qatar, South Korea, Turkey, and the United Arab Emirates.

ITUC Global Rights Index 2017: Violence and repression of workers on the rise – International Trade Union Confederation

「労働者が肉体的暴力や脅迫に晒される国が10%増加し、その中にはコロンビアも含まれている」

「11ヵ国で労働組合員が殺害され、その中にはコロンビアも含まれている」

「労働者の権利が無視されている国トップ10にはコロンビアも含まれている」

と記されている。

なお、一番上に挙げた労働環境に関するページによると、コロンビア人の法定最低月収は82万ペソ(2017)。

日本円で3万円ちょっと。(2018年5月現在のレート)

だが、より重要なのはその数値ではなく、物価と比較してどうか、という点にある。

私は、コロンビアのことを知る以前は、「物価は日本の半分くらいかな?」なんて思っていたのだが、実際に来てみると意外にも高い。

以下に、コロンビアの労働環境を物語るものとして、公益財団法人「国際労働財団」(Japan International Labour Fondation)のホームページ等より引用、補足、編集したものを載せる。なお2017年10月に発表されたものである。

参考)
JILAF|2017年 コロンビアの労働事情(人物招聘事業)
世界経済のネタ帳

コロンビアの労働環境

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実質GDP成長率

2015年が3.05%、2016年が2.04%、2017年が1.77%。

近年は多少は落ち着いてきているが、まだまだ発展途上国であり、高めの水準。

ちなみに日本はというと、2015年が1.35%、2016年が0.94%、2017年が1.71%。

物価上昇率

2015年が6.8%、2016年が9.8%。

かなりの勢いで上昇していることが分かる。

日本で言うならば、2014年に108円だったコンビニおにぎりが2年で約2割増しの126円になるようなものだ。

失業率

近年は9%前後。

2002年の15%台をピークに減少傾向にあるが、3%前後を推移する日本に比べれば随分と高い。

最低時給

2015年が2,684ペソ、2016年が2,872ペソ、2017年が3,073ペソと上昇傾向にある。

とはいえ、現在(2018年5月31日)のレートで日本円に換算すると、3,073ペソでも115円。

最低月収は約78万ペソで、日本円にすると3万円ほど。

法定労働時間

1日8時間、週48時間。
しかし、遵守されているとは考えにくい。

現在、コロンビアは、世界で3番目に格差の大きな国であるとされる。(ジニ係数)

そして、労働人口2216万人のうち61.6%が社会保障の恩恵を受けていない状態にある。

また、73.8%の人々が不安定雇用の中にあり、彼らは社会保険や社会保障の恩恵も受けられず、労働組合に入ることもできない状態にある。(短期雇用が多い)

ちなみに、15歳~24歳の若者の21.2%がNEET(就学・就労・職業訓練なし状態)である。

コロンビア国民の平均年齢が28歳(2015年)であることから、NEET割合はなかなかのものであることが推量できる。

なお、2016年10-12月のデータで、週15時間以上の家内労働を行う児童と青少年を含む拡大児童労働率は12.5%。多くの子供が働いている。

90年代には、国の公共サービスの99.9%が民営化された。この中には、医療や社会保険、年金なども含まれ、例えば救急車も民営で動く。保障が受けにくくなっている側面もある。

社会保障

2016年には就業者の35.5%しか医療・年金制度に加入していない

ちなみに就業者中61.6%が総合社会保障制度(医療・年金・労災・退職・遺族補償)から疎外されている

年金制度はあるが、定年に達した人の35%しか年金を受け取っていないのが現状。

労働組合の状況

コロンビアの労働組合メンバーは102万人。組織率はわずか4.6%に留まる。(日本は17%)

労働組合は政府から抑圧されており、抗議行動なども騒乱対策として弾圧されている。

1973年から2017年3月までの間に労働組合リーダーに対する攻撃が14,400件もあり、うち3,100件余りが暗殺事件となっている。(先ほどのランキング結果にも納得)

2016年も組合活動家に対する侵害活動が続き、268件の侵害が報告されている。うち19件が暗殺、17件が襲撃、188件が脅迫となっている。

ストライキ権は公共秩序を乱すものと見なされ、労働者の正当な権利として認められていない。

このような労働者の権利の侵害に対する提訴を裁判所に持ち込むと、大抵は経営者側に有利な判決が出されている実態にある。賄賂も珍しくない。(弁護士志望の学生も、コロンビアの法廷は腐敗しているなどと話していた)

最低賃金上昇を求めた訴えは政府に退けられるなどし、最低賃金の上昇額は消費者物価を下回り、労働者にとって厳しい情勢が続いている

 

ちなみに、2018年における報道の自由ランキングは130位。

法も政治も、まだまだ腐敗している。

なお、日本は67位で、もちろん最下位は北朝鮮の180位。

 

というわけで、なかなか厳しい状況にあるコロンビア。
まもなく大統領選挙を迎える。今後大きく動いていくことが予想される。

2018.05.31

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