【エストラト制度】コロンビアの住宅事情について【格差社会】

中南米

※写真はCiudad Bolivarの街並み

コロンビアには、エストラト制度という社会経済階層制度が存在する。
※エストラト(estrato)とは、階層を意味する。

1994年に成立したこの制度の目的は格差の是正であり、主に以下の内容が目指されている。

  • 経済能力の高い高所得層が、経済能力の低い低所得層の公共料金等(水道や電気、電話など)を負担することによる、所得再分配
  • 社会経済階層の設定による、低所得層の明確化
  • 社会支援プログラム実施対象グループのターゲット化

ざっくり言うと、富のある者からより多くの富を税金として徴収し、富のない者に分け与えるということになる。

日本でも累進課税制度(所得に応じて収めるべき税率を変更する)があるように、格差是正は、所得課税と資産課税の制度を通して実現されることが多い。

コロンビアは格差が顕著であるため、消費課税にも累進制を採用しているというわけだ。

エストラトの比率(2016年)

エストラト制度では、居住エリアが一番下の1から6まで6段階に分かれており、居住エリア階級によって負担する付加価値税制(VAT)が異なる。

数字が小さいほど貧しく、大きいほど富んでおり、3と4は中流階級にあたる。

たとえば、レベル1や2の低所得者には、税金を免除、教育・医療は無償、生活用品が安いなどの優遇措置があり、特に公共料金の差が大きい。

元々は所得の高い人が所得の低い人の分も公共料金等を負担するための制度であり、6が1を補い、5が2を補うという仕組みとなっている。

下の図のように首都ボゴタでは北に行くほどエストラトが高く、南ほどエストラトが低い。

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赤はエストラト1で、緑が6

北東の緑が目立つ地域はUsaquen(ウサケン)という。治安が良く、富裕層が多い。
日曜日には手工芸品の大規模なマーケットが開催されている。

南西の赤が目立つところはCiudad Bolivar(シウダッボリバル)という地域で、かなり治安が悪く、貧困層が多い。ここに行くことを拒むタクシーもいるという話を聞いたことがある。
なお、コロンビアで最も有名な日本人とも言われる横井研二というボランティア&モチベーションスピーカーの方は、以前この地域で活動していた。

横井研二さん

エストラトの低いところは大抵治安が悪いので、外部の人間は寄りつかない。

コロンビアの人たちは「ここから先は危なそう」などと言って道を慎重に選ぶ。
治安が改善されてきているとはいえ、小さい頃から危機管理意識を育まれてきたのだろう。

それぞれの居住区で生活のあれこれが完結するので、互いが交じり合うことは多くない。
南に住む人は一生北を知らず、北に住んでいる人は一生南を知らずに終えるとも言われる。
どの国・地域でも経済階層による実質的棲み分けはあるが、それが特に強いのが特徴とも言える。

しかし、地域の状況は時代とともに当然ながら移り変わる。
かつて困窮していた地域に位置しているというだけで、不必要に優遇されているケースも少なくない。
また、家の大きさや材質など、世帯収入とは無関係な要素でもってざっくりと区分されたという経緯もあり、階層の見直しによる適切な再分配が目指されるなどしている。

また、この制度で棲み分けが図られることによって、貧困の固定化と差別を招いているとの指摘もある。会話の中から住んでいる地域を探り合って経済ステータスを確認する人が多いのだという。

現地在住20年超の日本の方曰く、子供の通う学校が親の序列を左右するそうだ。日本でもそういうのは多少はあるかもしれないが、コロンビアの場合はより露骨であると彼は語っていた。なお、外国人はエストラト制度のカヤの外である。

2018.06

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