OB訪問アプリ「マッチャー」で知り合った社会人が情報商材に勧誘してきた話

大学/学生

留学から帰り、しばらくバタバタしたのちようやく就活情報を集め始めた2019年3月終わり頃、大学の友人が「Matcher(マッチャー)」というアプリで色んな社会人と会っているという話を聞いた。

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Matcherとは就活する学生向けの社会人訪問支援サービスである。

自己分析の手伝いや業界・職種・会社への理解促進などを目的に、学生から社会人にオファーを送り、マッチすると実際に会って話したり電話したりすることができる。

サービスの利用にあたって学生側がお金を支払う必要はない。では社会人の方々は何を目的に利用するのかというと、マーケティングや情報収集、採用活動に暇つぶしなど様々だ。

私はこのMatcherを使って4人の方とお話することになる。

その中で一番最初に会ったのが、先述の友人が勧めてきたAさんという男性であった。
友人は「Aさんには占い師みたいに色々と言い当てられた」と話していた。

アプリを見てみると、それまでにつけられたAさんの評価はかなり高かった。
どんなものか見てやろうじゃないかという思いで、彼に連絡することにした。

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東京駅にてAさんと合流し、駅構内の喫茶店で話をした。
彼は25歳くらいの、食品系のメーカーに勤める人物。新卒2年目とのことだった。気さくでフレンドリーな方であった。

出逢って初っぱなから「キミ、~でしょ」的なことをたくさん言われた。
当たっているものが多かったが、(コールドリーディングとバーナム効果狙いか、そんなもん多少観察すれば分かるわ)と内心思いつつも、同調しておいた。

Aさんは、会社の成り立ちや、自己分析や人生設計の重要性などを説いた。
自己分析に関する話を聞くのが目的の一つだったが、正直なところ、全体的に新たな発見や学びはほとんどなかった。
まあ年齢も近いし、社会人としてもペーペーだろうからそりゃそうか、と思った。

人生設計をよりちゃんと作っていくために、また今度話そう、と誘われた。
まあ良い人そうだし、もう一度くらいなら話してみてもいいかな?と思い、了解した。

後日、先述の友人に会ったときにAさんと会ったことを話した。

私「まあでも新たな収穫はなかったな」
友「言われてみれば俺もそんなになかったわ」
私「でも2回目会ったんやろ?」
友「2回目は全然意味なかった」

自己分析のための宿題ということでいくつかの質問に答えたのち、意味がないと評判の2回目は、その2週間後に新宿駅の都庁付近で開催された。

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自己分析なんてものは、大学時代に様々なことを体験し、それを振り返って言語化して経験に落とし込む中で既に十分できているという自覚があったので、改めて何かする必要はないという結論に改めて達していた。

人生設計に関しても、今ガッチリ決めることの必然性を感じていなかったので、ほとんど触れなかった。だから、雑談がメインであったように思う。

当時、私は自らが被害に遭った詐欺事件の証拠集めを完了して警察に動いてもらっている段階であったため、その件に関する話などをした。

その後は特に何もなかったが、6月上旬に就活の進捗を尋ねられ、それを機に6月下旬に新宿でまた会うことになった。
就活する上で何ら意味のある会ではなかったが、別にそれを期待していたわけでもなく、基本的に雑談だった。

その終盤、Aさんはこんなことを言った。

「知り合いにBさんという50代の凄い女性がいるから、今後紹介しようか?その人と話してみれば、何か新たな視点が得られるかもしれないよ」

AさんはそのBさんという女性をかなり尊敬している様子だった。
悩みなんて何もなかったが、どんな話ができるか興味が沸き、会ってみることにした。
また同時に、モノポリーというボードゲームを通して経営を学ぶ会があるので今度来てみないか、とも誘われた。

Aさんが日程を調整し、1週間後近く経った頃に、Bさんと会う日がやってきた。

日曜日の朝9時に、府中駅の改札前でAさんと合流することになっていた。
私はその時点で、何かクサいなと感じていた。

Aさんは千葉県に住んでいる。朝9時に府中に到着しようと思えば、かなり早起きしなければならない。しかも日曜日だ。一人の学生のためにそこまでするだろうか?
何かしら誘導してくる可能性が高いと踏んだが、それを見てみるのも一興と判断した。

そして予定通り、朝9時にAさんと合流し、そこから歩くこと数分、Bさんの住むマンションに到着した。上層階にエレベーターで移動し、チャイムを押して玄関に招かれる。

Bさんは、Aさん同様に気さくでオープンな感じの人だった。会社経営などをしている人と聞いていた。これまで何千もの学生の相談に乗ってきたという。

彼女は「大手の上層部は皆、経営における必勝の設計図を持っている。大手に就職してもその情報に到達するにはかなりの時間がかかる。私は以前そうした設計図を入手することに成功した。それを若者にバラまいてる」と語っていた。

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3人でしばらく雑談をしていた(主にBさんが喋っていた)が、突然私の将来設計の話になった。

私は経営に関心があるので、経営視点が得られやすい環境で働きたいだの、今志望している会社(それからまもなく内定)はまさにそういう環境だと感じているだのという話をした。

するとBさんは「キミは絶対経営者タイプだと思う」と言い始めた。

「キミがこれまでしてきた経験は全部、経営に活かされる要素を兼ね備えてるから」そのようなことを何度も繰り返し説いてきた。

私が自分のことを話したのはせいぜい数分。私がこれまでの人生で何をしてきたかなんてほとんど知らないはずだ。にも関わらず、そのようなことを断言できるはずがない。私は、いよいよ怪しくなってきたと感じた。

「でもそのためには教育が必要。知識がなければ上手くいかない」

そう強調してくるので「その教育というのは、座学的な勉強ということですか?」と返した。

「いや、そういうわけじゃない」
「というのはつまり?」
「それはAがあとで話すから」そう濁された。

そんなやり取りを二度三度繰り返したが、最後にははぐらかしてくる。怪しさ全開である。

怪しいポイントは他にもいくつかあった。

例えば、「私は昔から本を読まない。人間が書いたものに興味がないから」と言っていたにも関わらず、部屋には本がたくさんあった。一人で暮らしている、かつ引っ越してきてからまだ数ヶ月しか経っていなかったので、あまりに不自然だ。私は学ぶことがないほどに完成されていますという薄っぺらいブランディングだろう。

また、会話の中でやたらに有名企業の創業者/経営者だの大手企業の幹部の知り合いだのを持ち出してきた。自らの権威づけを意識していたのだろうが、露骨すぎて逆効果だ。

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それから3人で、近くのファストフード店にランチに行くことになった。

Aさんと先にマンションの1階に降りて、Bさんを待っている間に、Aさんが「教育」について具体的な話をしてきた。

どうやら「教育」とは、ビジネス知識について学べる会員制動画サイトのことであるようだった。チラッと画面を見せてもらったところ、「ポイント」という表記が目に入った。なるほど、課金制の情報商材ということか。で、それが”設計図”ということなのだろう。

ファストフード店でもBさんは「教育が本当に重要」と何度も唱えた。刷り込もうとしている感が露骨で、滑稽に感じられた。

「設計図は無料でバラまいている。私にとっておカネなんてどうでもいい。生活できればそれでいい」などと豪語していた。

カネなんてどうでもいいと言っている社会人は基本的に信用しがたい。有料情報商材を売りたい(購読させたい)のが見え見えであるこの状況で、この主張はただただ片腹痛かった。

トイレに立ったとき、iPhoneをテーブルの上において録音しておいた。私がいないときにどんな会話がなされるか確認するためだ。

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昼には解散し、Aさんとともに新宿駅に向かった。

Aさんは「どうだった?」と尋ねてくる。
「う~ん、まあ勉強は大事だなって改めて感じました」と無難に返した。

「Bさんには事前に僕の情報は伝えていたんですか?」と尋ねてみた。
「いや、ほとんど伝えてないよ」と彼は答える。
ならば尚更、前半の断言は都合の良いハッタリ的決めつけであるとの確信が強まる。

車内ではAさんが例の動画サイトを再度見せてきた。オススメされた動画を1つ観てみた。
男性の講師がビジネスについて何か語っているというものであったが、ノーカット編集でノイズが大きく、喋り方も明瞭ではなく、低クオリティとしか言いようがなかった。同じようなことを説く書籍やサイトは腐るほどあるだろう。

サイトを勝手に徘徊してみたところ、掲示板機能やらモノポリー関連のページもあるようだ。

そんな中、月額1万円で、2年契約という表記を発見。つまり契約すれば24万円を支払うことになる。何が無料だ。ここまであからさまな嘘をついてくるとは。

その後、車内ではあまり会話はなかった。
Bさんの目的が私に自前の情報商材を売ることならば、Aさんはそのための潤滑油となる営業マン。日曜の午前中を費やすことの見返りは、営業のインセンティブであることは自明。

しかし、私としても、そこで対立の姿勢を打ち出すのは気が引けた。だから、自分から何か発する気になれなかった。察しろオーラを出していたつもりだ。

Aさんを見ると、何か考え込んでいるようだった。どのように私に契約させるか頭を捻らせているようにしか見えなかった。

なお、彼は大学3年か4年のときにBさんと出逢い、それ以来その商材のメンバーであるらしい。

4月や6月に会ったときに交わした会話の内容やキーワードが、Bさんのそれとほとんど同じであったので、かなり影響を受けているのだろう。AさんはBさんのコンテンツを本当に良いと思っているのかもしれない。

しかし、この回りくどいやり方は、本当に良いと思うものを売ろうとする人間の姿勢とは思えなかった。2年縛り契約という形態も、商品への自信のなさの表れとも取れる。

ちなみにメンバーは100人くらいいるとのこと。

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電車を降りて、改札口まで歩いていたとき。

「メンバーになってみる?」デートに誘うウブな少年のような恐る恐るな感じで、彼は私にそう提案した。

「いや、遠慮しておきます。まだ働いてもいないので、座学をしたところで実践の場がないですし」と濁した。

「でも、Bさんも、勉強するなら今からって言ってたよ」

それまではなるべく波を立てないようにしようと思って堪えていたが、めんどくさくなってきたのと、舐められたもんだなと腹が立ってきたので、本音で話すことにした。

「正直、さっき見せてもらった動画、クオリティ低いですし、無料とかならまだしも、月1万円の2年縛りで24万円も払う価値はないと感じました」

「それに、Bさんは無料だとか言ってましたけど実際のところは有料だったり、本を読まないと言っていたのに家にしっかり本が置いてあったり、少ない情報しか与えていないにもかかわらず決めつけて話を誘導したり、肝心なところではぐらかしたり、何度も同じ話を繰り返して刷り込みみたいなことをしようとしてきたりということがたくさん見受けられた時点で、もう最初の方からBさんは胡散臭いと感じましたし、だからこそ、そんな人が売ってる商材を購入する気にはならないです」

「やり方を間違えましたね。もっと最初からストレートに『こういう情報商材があってこれの特徴やメリットは云々』と説明した方が良かったですよ。回りくどすぎて馬鹿らしかったです」

的なことを、もう少し丁寧な感じに伝えた。

Aさんは険しめの表情を浮かべていた。

「で、Aさん、あなたもわざわざ日曜の午前を潰してまでBさんと僕を会わせようとした時点で、僕のためというよりも自分自身の営業インセンティブのために動いてるの最初から察しがついてましたよ、お疲れ様です」的なことは流石に言わなかった。

「そっか。ならそれでいいよ」
Aさんは若干強張った感じでそう言った。

もうこの人に会うことはないなと改めて確信しながら、私は彼に一応の礼を伝え、背を向けて改札の向こうへと歩いていった。

このケースはいわゆるマルチ商法とは異なるものだが、ググって出てきたあるページに記載されていた「マルチ商法の勧誘の特徴」に当てはまるものがいくつもあった。

・会わせたい人がいると言ってくる
・セミナーやホームパーティーに誘ってくる(モノポリー)
・勧誘目的だと告げない(めちゃくちゃ遠回し)
・金銭的なリスクに触れない(費用に関する説明はなかった)

Aさんは私が一度詐欺被害に遭ったことを知っているから、コイツならイケると思ったのかもしれないが、そんな稚拙な営業方法では私の不信感は高まるばかりだ。もっと勉強しておけよと言いたかった。

Matcherでビジネスや経営に強めの関心のある学生を見つけて、イケると思えばBさんを紹介し、何かとテキトーな理由をつけて商材を売るということを繰り返しているのかもしれない。
まあ実際、そのプロセスで購入へと至る学生もいるのだろう。

Matcherを含め、OBOG訪問系サービスも善意で成り立っているわけだが、こういうダサい奴らもいるので利用の際は要注意。Matcherではレイプ事件が発生したりしている。

余談だが、家に帰ってからファストフード店での録音を再生してみたところ、予想通り、いかに私に商材への興味をより持たせるかといった内容の会話であった。

2019.07.31

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