回転寿司での客の迷惑行為で若い世代を嘆くな

犯罪/胡散臭

回転寿司やその他飲食店での客の迷惑行為が世間を騒がせている。

その内容は、流れてくる皿にワサビを載せる、醤油差しに口をつける、使った爪楊枝や舐め回した箸を容器に戻すなどといったもので、中学生くらいの子供が中心ながら、30代以上の大人も混ざっていたりする。

「これだから最近の若者は」「Z世代はゴミ」ーこのような世代を一括りにして若者を叩く人もいるが、そんな考え方は100年前も変わらない世の常で、目立つからといってそういった行為の数が昔に比べて増えたとは一概には言えない。

恐らく、いや確実に、この手の行為は元々あった。それがTwitterやTiktokなどのSNSで当事者以外に対して可視化されたというのが大きい。
無論、SNSで「人に見せて反応を貰う」ことを目的としてそういった迷惑行為に走るケースも多々あるし、もっと反応を貰うため、あるいは周囲もやっているからと過激化しやすくなる、というのもあるだろう。

例えば凶悪事件が起きるたびに「治安が悪くなった」と言う人が一定数いるけれど、日本において刑法犯認知件数や発生率が年々減少していることは意外と知られていない。

警察庁 特集:変容する捜査環境と警察の取組 第1節 犯罪情勢と捜査上の課題
京都産業大学法学部 「犯罪は増えていて凶悪化している」という誤解

し、巷を騒がせがちな少年犯罪だってそうだ。(まあ少年の数自体大幅に減っているのだけれど)

京都産業大学法学部 「犯罪は増えていて凶悪化している」という誤解

なぜ現実と認識にこのような乖離が生まれるのか。

一つは、件数が減ったことによってかえってそれぞれが目立つようになり、意識されやすくなったということ。

また、これは推測だが、人は大抵、幼少時はあまりニュースに関心を抱かないから、犯罪報道にも触れにくい。それが大人になってニュースに触れる機会が増えることによって、「犯罪が増えた」という印象を抱きやすいのかもしれない。

さらに、認知件数がピークを迎えた2002年頃まで、ニュースでは「犯罪件数が増加」と大きく騒がれていたに違いない。そのときの印象を引きずっている人も多いのではないかと思う。マイナスな内容ほど報道されやすいし、印象に残りやすい。(書籍「ファクトフルネス」のチンパンジークイズに通ずるものがある)

どこまでならセーフでどこからはアウトか、その線引きは無論個人差があり、時代によっても変わる。昔は体罰やイジメがもっと酷かったし、もっと当たり前に横行していたし、それが問題になりにくい世の中だった。
その線引きに関する当人の感覚が今の世間にとってバグったものであれば、このような迷惑行為を自ら堂々と晒すことになってしまう。

また、想像力を働かせるのが難しい人たちもたくさんいる。特に子供はそうだ。先天的または後天的に認知能力が低い人も、実際のところ多く存在している。それも昔から変わらない。

それにしても、こんなニュースが連日世間を賑わせるのは、いささか過敏すぎないかとは思う。確かに誰もが叩きやすいテーマではある。恐らく随分と前の迷惑行為も含めて、次々とネット上でアップされつづけているからというのもあるだろう。なかなか熱が収まらない。

色んな種類の迷惑行為がある中で、衛生面で批判されているモノが多い。コロナ禍でマスク着用やアルコール消毒などが一般的になったことで、人々の不衛生に対する拒否反応が以前に増して強くなっているのかもしれない。

なお衛生面だけを考えれば、高校生が舐めた醤油差しや触った回転中の寿司も汚いが、ケツの拭きが甘い老人(普通にたくさんいる)が浸かる狭い湯船だって、いくら減菌されていてもある程度は汚い。フケもアカも陰毛も浮いている。それでも皆入るし、顔をつけたりもする。駅などで不特定多数が使うトイレだってそうだ。咳やくしゃみの飛沫も実は結構遠くまで飛んでいる。
また、西洋人などは土足で家に入ってベッドの上でそのままあぐらをかいたりするが、実は犬の糞やオッサンの唾液が靴底についているかもしれないとはあまり考えない。トイレのあとに手を洗わないオッサンが1分後に電車のつり革を握っているなんてことは常に起きている。

それらを気にしないのは、その社会において「そういうもの(問題ないもの)」になっているからであり、目に見えにくいからだ。当たり前すぎて、それを疑うこともない。無意識的に目を伏せている、または無意識ですら何も認識していない。

このように、物事は都合の良いイメージで成り立っていたりする。日本のような治安や衛生環境が比較的良い国においてはなおさら、こういった迷惑行為が明るみに出たときに、迷惑行為の現場となった企業が負うダメージは、たとえ落ち度がないとしても、時に甚大だ。こういうのがもっと頻発し、当たり前の風景となれば、長い時間をかけて皆気にしなくなっていくかもしれない。

とはいえ誰にとっても気分の良いモノではないし、拒絶反応はなかなか消えるものではないから、そういった迷惑行為を減らしていく方法で進めていってほしいものだ。

同じような現象であるバイトテロは、数年おきに増加するという。人間の記憶力は頼りなく、熱が冷めればまた同じことを繰り返す。また先述のように、特に幼少期、自我が芽生える前などはもっと頼りないので尚更だ。

だから、月並みな話だが、SNSの問題やリスクについて、継続的に教育機会を設けた方がいい。
小学校低学年くらいから高校・大学くらいまでは「毎シーズン」教えるべきだろう。いや、既にやっているのかもしれないが、実事例(多少脚色が必要?)を交えまくってもっとやるべきだ。
それで各人の一生が無為に狂うリスクを減らすことができ、世間がしょうもないニュースに騒がず済み、過激な誹謗中傷を抑制できるのであれば、1学期に1コマくらいでもしっかりやった方がいい。

それで殺人や強姦のような犯罪も減らせるなら苦労しない。しかし学校教育の影響を受けやすい若年層による、全面的な批判を招きやすい行為を自らSNSなどにアップするという自爆行為についてなら、大きな効果があるだろう。

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