大学5年生が他大学のサークルの新歓にその大学の1年を装い潜入した結果(早稲田大学編)

大学/学生

そろそろ時効だと思うので、大学5年生だった2019年4月に早稲田大学と大正大学の新歓に潜入したときの話をしようと思う。

 

なぜ潜入したのか?理由は3つあった。

  1. 潜入が好きだから
    なぜなら、非日常のスリルを味わうことができるから。というわけで大学に限らずこれまで様々な潜入を実行してきた。
  2. 都内の大学の新歓がどんな感じなのかを知りたかったから
    地方大学で過ごしてきた私はそれがどのようなものなのか知らず、興味を惹かれていた。
  3. シュールな光景を楽しみたかったから
    1浪大学5年生である私は1995年度生まれ。一方で周りの1年生たちは、ほんの少し前まで高校生だった2000年度生まれだ。中には21世紀生まれも混じっている。2-3年生の先輩たちですら3-4歳年下である。年下に先輩風を吹かされながらペコペコするのはどんな気持ちなんだろうか、そのシュールな光景を楽しみたい、という好奇心があった。
 

事前にTwitterで「〇〇(大学名) 新歓」などと調べた上でキャンパスを訪れ、新歓と思しきいくつもの集団を観察しながら、ターゲットの品定めを行なった。

新歓潜入にあたって決めた条件は3つ。

  1. インカレでないこと
  2. ウェイ要素高めなこと
  3. おおむね30人以上いること

インカレの場合、様々な大学の学生が参加しているわけなので、アウェー度が下がってしまい、潜入感が薄れてしまう。

また、私がいた大学は傾向的におとなしめの学生が多いので、なるべくそれとは違う空気を感じたいと思っていた。

そして、人数が少なすぎると自ずと発話量が増えてしまい、ボロが出やすくなってしまうため、一定以上の人数規模の集まりに焦点を絞った。

私学の雄・早稲田大学

まずは有名私大の代表格・早稲田大学。大学の友人Aとともに、大隈重信像が存在感を放つ早稲田キャンパスを訪れた。

ちなみにAとは大学2年次に高校の制服(っぽい格好)で大学のオープンキャンパスに潜入、集団ガイダンスやキャンパスツアーに参加し、案内してくれた面識のない大学1年生のスタッフたちを2人で質問攻めにして遊んだことがあり、これが3年ぶり2度目の共同潜入だった。

ウェイな感じのミュージカル系サークルを見つけて第一候補とするも、他のサークルを物色している間に満席になってしまったため、男が大半のちょっと地味な雰囲気の旅行系サークルの集団に混じった。30-40人ほどの集団で列をなして、高田馬場の居酒屋までの道のりを歩いた。

早大生御用達感のあるその席の大半が私たちで占拠される。最後尾を歩いていた私とAは、他の2人の新入生とともに一番端の席に並んで座ることになった。1年生から500円が徴収される。ドリンクは飲み放題で注文は自由だが、1年生はノンアルコールという雰囲気があったため、ボロを出さないためにもソフトドリンクをオーダーした。

私は高1の頃から使っている偽名「山田コウキ」で通し、Aは「木島」を名乗っていた。潜入にあたっては念の為にLINEを尋ねられたときに備えてLINEの名前をYKなどと一時的に変更していたと記憶している。4人で時間割や入試の話になった。私とAは2人とも社会科学部という設定でテキトーに話を合わせた。嘘がバレないように話をテキトーに合わせて盛り上がるスリルは、潜入の醍醐味である。

2-3年生の先輩たちがやってきて、空いた席に腰を下ろした。アルバイトの話になり、先輩がおすすめのバイト先について語り始める。「そうなんですねェ!」無垢を装って相槌を連発する。

楽単がどうであるとか、とりあえず出席しておけば大丈夫とか、1限に間に合うのは大変だとか、大学生あるある情報を後輩に伝授している2-3年生が全体的に多かった。

4つ下の学年の者に同級生として接し、2つ下の学年の者にさらにその2つ下の学年の者として接するー。ただそれだけで非日常感があって面白かった。

大学1年のときに大学4年と思われることもあった私が5学年もサバを読んで1年生として振る舞うのは、流石に見た目や雰囲気で怪しまれるか?と懸念していたが、「浪人?」などと聞かれることもなかった。まあ思ってたとしても言わないか。

イメージ

そこで十分に飲み食いを済ませると、次に近くの別の店で二次会が開催された。地方大学にありがちな「宅飲み」を多少期待していたが、都内の場合は地方大学と違って皆それぞれ住居が離れているから、宅飲みの頻度はあまり高くないのだろう。

広々とした畳の座敷に並んで座る。一次会に比べて少し人数が減っていたが、それでも20人以上はいたと思う。男ばかりのサークルだが、少し近くに3年生の女子3人が固まって座っていた。正直かなりタイプな子がいた。ここで出逢った以上、何も切り拓くことはできないのが残念だった。なお、その中に一人だけ別の大学の人がいた。

私の隣に座っていた3年生の男の先輩と言葉を交わす。

「学部どこ?」
「社学(社会科学部)です」
「おっ、一緒じゃん!」
「(ヤバい)」

彼との会話でボロが出る危険性はかなり高い。バレたら確実に問題になる。冷や汗が流れるような心地になった。

 

「山田くんはどんな授業取ってるの?」キラークエスチョンが唐突に発せられる。

「えっと…(何の授業があるのか全く知らねぇ…)基礎科目とか教養の授業とかですかね…哲学系とかの」などと無難に返す。

そしてさらなる追及を避けるため、間髪入れずに「先輩は1年のときどんな授業取ってました?」と切り返し、ひとまず身を守りつつ情報収集する。マイ早稲田が何とかと言っていたことは覚えている。(履修登録システムの名称だと思われる)

それから話題を別のものーアルバイトやサークルなどこちらがボロを出さずに済むようなものに切り替え、なんとか危機を回避できた…と思えたのも束の間。

 

「もし良かったら時間割見せてもらってもいい?」

 

なン…だと?

そんなに時間割を知りたいのはなぜなのか。授業が被ってるかどうかを知りたいのか?どの先生がどの授業をやっているとかが気になったりするのか?

いや…まさか、怪しまれている?

しかしこんなときこそ、とっさの機転が働くものだ。

「いいですよ」と気さくに答えて、iPhoneの入ったポケットに手を突っ込み、瞬時に手探りで電源を落とす。少し間を置いてポケットから取り出す。先輩は画面を覗き込む。

「あっ、バッテリー切れちゃってたみたいです…また今度会ったときに見せますね」

「あ~それは残念、分かった!」なんとかそれで事なきを得た。

 

恐らく怪しんでいたわけではなかったのだろう。本当に怪しんでいたのなら学生証見せてとかもっと色々と確実な手段で迫ってきたはずだ。私も先輩の立場なら、後輩の時間割は気にならなくもない。授業のうんちくを語るなど話のネタになるし、「うわッこの授業懐かしい~」といったことに感慨を覚えることもできるのだから。

ちなみに社学(社会科学部)の学生はだらしないヤツが多いらしく、シャガクズ(社学の屑)という呼称があるそうだ。木島ことAがヘコヘコしながらその先輩に率先して酒を注いだとき「お前デキるシャガクズだな!」と褒められていて、笑いを堪えるのが大変だった。

「先輩!ビール足りてませんよぉ」

3年生が多かったこともあって就活の話になり、「早稲田でも就活に苦労する人はする」「社学には就活に強いという話のあるゼミもある(実際に会社訪問してマーケティング関係の発表したり)」などと教えてもらった。

他の先輩や1年生らとも色々と話した。「1限は結構入れてる?」「社学ってどんな勉強するの?」といった質問にはノリで答えた。

 

話題が出身地に及んだときは、実際と異なる出身地をゲーム感覚で答えようかと一瞬迷ったが、もしそこの出身者や詳しい人がいたらボロが出る可能性が高い(旅行系サークルなので皆色んなところに行ったことがあるようだった)ため、素直に自分の出身地でいくことにした。

あまりにフェイクまみれの情報ばかり繰り出しても会話を楽しめない。即興で作り出す架空の人物に感情も思いも乗せることができない。途中からそう感じはじめた私は高校時代のことなどをそのまま話すなどするようになった。

それに、ボロが出て怪しまれるリスクにビクビクしながら嘘をつきつづけるのは精神衛生上良くない。無論、ギリギリのところで全てうまく回すことができれば、それもそれでスリリングで面白いのだろうけれど。

サークルメンバーたちは一見すると隠キャ系・オタ系が多めだったが、気さくでフレンドリーな人が大半だった。緩く温かいコミュニティであると感じた。

附属校・早稲田大学高等学院からの持ち上がりの人が結構多く、鉄道研究会という旅系の部活出身者が目立った。都内出身者が多く、聞いた限りでは大抵が自宅から通っていた。

なお新歓実施にあたっては、LINE@、Twitter、Instagramなど、フォロワー数は少ないながら広報・情報提供の手段としてSNSを活かしているようだった。このシーズンの新歓は今回が初めてで、遠足や合宿など含め7回ほど開催する予定だという。

 

盛り上がりもピークを過ぎた頃、つくば在住のAが「電車の時間があるから退席する」と私にコソッと告げた。都内住みの私はもう少し残っても良かったが、大きな秘密を共有する相手が近くにいないと、いたずら感が薄れて面白みが減るので、同じタイミングで一緒に退室することにした。

「キャンパスで会おう!」

そう言って部屋の外まで見送ってくれた数人の先輩たちに挨拶して、私たちは高田馬場駅へと向かった。ジュースの飲み過ぎでお腹が緩くなっていた。

せっかく出逢った彼らと友達になりたかったなぁと、帰り道にふっと思った。

あのとき仲良くしてくれた皆さま、申し訳ございませんでした。(しかし第2弾に続く)

2019.04

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