失恋して深夜徘徊していたときに慰められた言葉

雑記

10代最後の11月の終わり頃、私は好きな人にフラれてクヨクヨしていた。

そんなとき、深夜徘徊イベントなるものに参加した。午前0時に都内のどこかに集まった十数人で、空が明らむまで色んなところに寄りつつ10kmほど歩くというものだ。一度参加したことがあり、このときは2回目だった。

その夜は信濃町駅構内に集合し、明治神宮外苑前、表参道、代々木国立競技場、南青山の高級住宅街などを、途中で運営の方の説明を聞きつつゆったりと歩く。

20-30代の参加者が多い中、50代後半には差し掛かっているであろう一組の夫婦がいた。
男性は白髪のポニーテールで、フォーク音楽でもやっていそうな雰囲気を漂わせている。
このイベントでは申込時にニックネームを決めるのだが、彼らのそれは”ボスのパパ”と”ボスのママ”だった。ボスとは、彼らが買っている猫の名前だそうだ。

その年齢でこんなイベントに参加するのは、なかなかのフットワークの軽さだなと思った。面白いことを求めて色んなところに足を運んでいるのだろう。人生を自由に謳歌しているに違いないと感じた。

お二人とも、色んな面白いことに参加しているという印象を受けました、と話しかけてみた。
そしてやはりそうらしい。

何年も前に、山手線に沿って歩いてみるという遊びをしたところから、色んなことに積極的に手を出すようになったという。色々と話し込んだ。

彼らは毎年11月に行われる浅草の酉の市に毎回足を運んでいるそうで、このイベントが終わったら向かうという。一緒に来る?と誘ってくれたので、そうすることにした。

最終目的地・恵比寿ガーデンプレイスに着いたのは4時40分頃。まだ辺りは暗かった。ここに来るのは初めてで、赤いカーペットとクリスタルの巨大なシャンデリアに心を奪われかけた。

 

解散後、皆で恵比寿駅へと歩いた。そして夫婦とともに日比谷線改札へ。

三ノ輪駅までの電車の中、そして酉の市までの道のり、そして帰り道、その夫婦と色んな話をした。

この頃色んな人にポリシーを尋ねることにハマっていた私はボスのママにポリシーはなんですか?と尋ねてみた。

自分に限界を作らず、楽しんで色んなことに挑戦すること、と彼女は答える。

この夫婦が結婚したのは10年前だそうで、出逢ったのも10年ほど前だそうだ。ボスのママはバツイチのようだ。ボスのパパもそうなのかもしれない。

お二人とも息がぴったりだな、と感じるんですけど、喧嘩することはあるんですか?と尋ねてみた。二人は顔を見合わせ、ないよね、と言った。

それは、息がぴったりだからですか?それとも、忍耐力があるからですか?と尋ねる。

思ったことを言葉にするからじゃないかな、とボスのママは答える。

喧嘩しないのは、良いところも悪いところも言葉にして相手に伝えて違和感を生まないから、と。

浅草の酉の市は、早朝にも関わらず活気に溢れていた。どこを見てもド派手な熊手がたくさん飾られており、朝の冷たい空気も相まって新鮮さをひたひたと感じた。二人は、1つ1000円の火除けのお守りを2つ購入していた。

駅への帰り道、この仲睦まじい夫婦に、人生の先輩としての何かを感じ、思い切って、最近失恋したんですけど、若い頃の恋愛について何か思うことはありますか?と尋ねてみた。

熟年になって始まった彼らの恋愛は、若さゆえの勢いに頼らず、自立した精神を絡ませ合うコクのある愛なのだと思う。失敗を重ねて、遂に自分にふさわしいパートナー、人生の伴侶を見つけることができたのだろう。これらは全て印象に基づく想像であり、そんな綺麗なものではないかもしれないが、今の自分にとって何か意義のある言葉が飛び出すんじゃないかと思ったのだ。

失恋は本当に縁のある人と出会うために必要なステップなんだよ

と彼らは言った。失敗してもそこから学ぶことがあったならそれは完全な失敗ではない、と。

その言葉を聞いて、失恋相手への執着が希釈されていくのを感じた。

この2週間近く、その子への想いを吹っ切りたい、恋する気持ちを忘れたいと考えて過ごしていた。

でも、色々考えを巡らせた結果、それは無理だということが分かった。これまでに好きになった人を考えてみてもそうだ。簡単に恋愛感情が薄まったことはなかった。いつでも新しい恋の始まりによって古い恋に終止符を打っていた。

今、自分にとって納得できる選択…それは、“もっと良いと思える人を見つけること”、それに尽きる、ということに、まだまだ幼かった私はようやく気付いたのだ。

彼女ばかりに目が行き、すっかり視野が狭くなっていた自分の視界は、その冬の日の朝焼けの空のように澄み渡りはじめていた。

南千住駅で二人と別れた。またいずれ会えたらいいですね、と言い合って互いに別々の改札に向かった。

 

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