という馬鹿なタイトルの答えは、言うまでもなく基本的にはNOだ。
2021年10月末、コロナ禍がとりあえずは沈静化しつつある東京、ハロウィンで浮き立つ人々に紛れてアメコミの登場人物「ジョーカー」の仮装をした服部恭太なる人物が京王線車内にてナイフを振り回して火を放った。
幸いなことに死者は出なかったものの、逮捕後に彼が発した「人を殺して、死刑になりたかった」などという言葉はメディアを騒がせると同時に、多くの人にとって聞き覚えのある内容だったはずだ。
「死刑になりたかったから―」「自殺は怖くてできなかったから―」
事件後にそんなことをホザく犯罪者の出現は今に始まったことではない。
確かにその望みが叶えられた者もいる。しかし、全体からすれば彼らは少数派だ。
- 死刑を望んで起こされたとされる事件
- 確実に死刑を目指すなら被害状況と責任能力が重要
- 死刑になる方法は殺人だけではない
- 都会の電車内で暴れるよりは限界集落で放火する方が確実
- 【重要】関係ない人の命を奪うのはやめよう
- そもそも死刑は簡単には執行されない
- 手軽に死刑になりたいならば中国にでも行け
- 彼らは果たして本当に「死刑になるために」人を殺そうとしたのか
- 手っ取り早く殺されたい×有名になりたいならマフィアかテロ組織に喧嘩を売れ
- 社会への不満が主要動機ならイスラム原理主義過激派に捕らえられろ
- 気持ちよく死にたいなら薬物を過剰摂取しろ
- 死にたい×良いことしたいなら紛争地域に人命救助しにいけ
- 【番外】刑務所に行きたくて事件を起こすくらいなら閉鎖病棟に行け
死刑を望んで起こされたとされる事件
こちらのサイト(いちらん屋 死刑になりたいと望んで引き起こされた犯罪事件の一覧)などを参考に、21世紀に入ってからの日本国内での「死刑希望者による事件」を以下に列挙する。(時系列順)
附属池田小事件(2001)
被害:小学校内での無差別攻撃で8人が死亡、7人が重軽傷
加害者:無職男性(37)
発言:「小学生をターゲットに選んだのはたくさん殺すことができ、たくさん殺せば死刑になる」「死刑にしてくれてありがとう。もうはよう、死にたい思うてたから、ほんま助かる。やっと死ねるんやなーと思うとほっとしたわ」
判決:死刑(執行済)
茨木市連続ひき逃げ事件(2004)
被害:通行人5人が車ではねられ2人が死亡、3人が重軽傷
加害者:新聞販売店従業員韓国籍男性(23)
発言:「他者を殺害することで死刑になり自殺をしようとしていた」
判決:無罪(統合失調症などによる心神喪失状態であったとの判断)
自殺サイト殺人事件(2005)
被害:自殺サイト利用者の男女3人が死亡
加害者:派遣修理工男性(37)
発言:「これまでに3~4回自殺未遂をしたが死にきれなかった」「自分で自分の欲望を止められないのなら、死刑になって終わりにしたい」
判決:死刑(執行)
平和記念公園殺人事件(2007)
被害:ホームレス男性1人が死亡
加害者:ホームレス男性(54)
発言:「所持金を使い果たし路上生活している生活に悲観し、自殺する勇気がないので死刑になって死にたい」
判決:無期懲役
東京都新宿区の公衆トイレでの殺人未遂事件(2008)
被害:金槌で頭を殴られた男性1人が重傷
加害者:無職男性(31)
発言:「死にたくてウロウロしていたが死にきれなかったので、誰かを殺せば死刑になると思って殴った。誰でもよかった」
判決:不明(殺人未遂罪であるため5年以上の懲役か)
土浦連続殺傷事件(2008)
被害:通行人2人が死亡、7人が重傷
加害者:無職男性(25)
発言:「自殺をする勇気が無かったので殺人を犯した。早く死刑になりたい」 「自殺は痛いので。失敗すれば、長く苦しむだけ」
判決:死刑(執行済)
鹿児島県姶良町のタクシー運転手殺害事件(2008)
被害:男性1人が刃物により死亡
加害者:陸上自衛隊男性(19)
発言:「人を殺して死刑になりたかった」
判決: 懲役5年以上10年以下の不定期刑
取手駅通り魔事件(2010)
被害:バス内で刃物による殺傷、1人が重傷、14人が軽傷
加害者:無職男性(27)
発言:「リストラされ再就職がうまくいかず、自分の人生を終わらせようとした」
判決:懲役3年6ヶ月
大阪心斎橋通り魔殺人事件(2012)
被害:路上で2人が刺されて死亡
加害者:刑務所を出所したばかりの無職男性(36)
発言:「住む家もない、仕事もない。自殺を思い立って包丁を購入したが死に切れず、人を刺せば死刑になると思った」
判決: 無期懲役(一審では死刑判決だったが「死刑が怖くなった」ため上告)
人工透析患者のチューブ引き抜き事件(2014)
被害:患者の医療用チューブが故意に引き抜かれる(大事には至らず)
加害者:医師男性(49)
発言:「誰かを殺して死刑にしてもらおうと思った」
判決: なし(起訴猶予)
名古屋市の中村公園での殺人事件(2014)
被害:公園で男性1人が切りつけられ死亡
加害者:無職男性(20)
発言:「刺された男性とは面識はない。無差別に狙った。4日前にアルバイトをクビになり、ホームレスをしていて、もう人生が嫌になった。人を殺して死刑になりたかった」
判決:懲役20年
東京都江戸川区の女子高生殺害事件(2015)
被害:アパートで女性1人が強盗殺人により死亡
加害者:コンビニアルバイト男性(29)
発言:「バイトでは生活費などが足りず、消費者金融から100万円以上の借金があった。高血圧や、それによる心筋梗塞などの病気もあった。自暴自棄になり、自殺か連続殺人をして死刑になろうと考えた」
判決: 無期懲役
北海道釧路4人殺傷事件(2016)
被害:商業施設内で4人が刺されて内1人が死亡
加害者:新聞配達アルバイト男性(33)
発言:「人生を終わらせたかった。死刑になるため人を刺した」→その後「(精神の)病気の症状が改善せず、自分が嫌になり、人を殺せば死刑になれると考えた。今は死にたいとは考えていない」
判決: 無期懲役
京王線刺傷事件(2021)
被害:電車内で刃物による攻撃および放火、1人が刺され重傷、17人が負傷
加害者:無職男性(24)
発言:「人を殺して死刑になりたかった。2人以上殺せば死刑になると思った。小田急線の事件を参考にした」
判決:未定(ほぼ確実に有期刑)
豊里こども園侵入事件(2021)
被害:認定こども園への侵入および殺人未遂(男性職員らに押さえつけられ大事には至らず)
加害者:無職男性(31)
発言:「2人以上殺せば死刑になると思った」「子供なら簡単に殺せると思った」「小さな子どもを殺し、捕まって死刑になるためだった」
判決:未定(殺人未遂罪であるため5年以上の懲役か/精神鑑定の結果によっては不起訴も)
他にもあるとは思うが、有名どころは概ね出揃っているだろう。(7人が死亡した2008年の秋葉原通り魔事件については、死刑になることが主な動機とは考えられなかったためカウントしていない)
この15件のうち死刑判決が確定したのはたったの3件。
なお殺人や傷害の加害者のほとんどは男性だが、この15件も全て男性が加害者となっている。
確実に死刑を目指すなら被害状況と責任能力が重要
今の日本の殺人罪/強盗殺人罪に係る刑罰の決定にあたっては「被害者数が1人なら無期懲役以下、3人なら死刑、2人がボーダーライン」という暗黙の基準がある。(犯行態様や前科、年齢なども考慮される)
基本的に3人殺せばほぼ確実に死刑だが、2人だと無期懲役止まりの可能性があるし、1人なら有期刑であることが多い。もちろんやり直しは効かない。人はそう簡単には死なない。
かつてないような緊張状態の中で、扱い慣れない刃物などを使って確実に人を2-3人以上殺せるだろうか。今回の京王線事件にしてもそうだ。殺したつもりがあくまで重傷だった、という結末を迎える可能性は低くはない。屈強な男が止めにくる可能性だってある。
そして何とか2-3人以上殺せたとしても、心神喪失状態で責任能力がなかったと鑑定される可能性だってある。もし死刑になりたいと思ってこれを見ている人がいるとすれば、そんなことを考えている時点で貴方の精神はもしかすると既にかなり追い詰められていて、ゆえに医学的に正常であるとは見なされにくいかもしれない。
緊張状態の中でも2-3人以上を確実に仕留められる、かつ責任能力があると認められるような精神状態でなければ、骨折り損どころか多大な損害を自ら被ることになる。
例えばジョーカー男は大きな騒ぎを起こした割に1人も殺せなかったので、せいぜい十数年以下の有期刑に終わるだろう。その間はもちろん労役に励まなくてはならない。一人ずつ個室が与えられる死刑囚とは異なり、刑務所内は基本的には雑居房であるから、彼のような人間は人間関係で悩まされることにもなるだろう。鉄道会社への損害賠償金も馬鹿にならない。
死刑になる方法は殺人だけではない
「死刑になりたかった」と言って事件を起こす者のほとんどは「殺人罪」「強盗致死罪」に該当する。(というか死刑囚のほぼ全員にこれらの罪名が下されている)
しかし日本の刑法下において、実は刑罰に死刑が含まれる犯罪はそれらを含めて全部で18種類も存在する。以下にそれらの罪名を列挙する。
参考:死刑になる犯罪は18種類|主な罪名と死刑執行までの流れ|刑事事件弁護士ナビ (keiji-pro.com)
・内乱罪
国会・内閣・裁判所などの統治機構を転覆や破壊させる目的で暴動を起こす犯罪(=革命やクーデター)
刑罰:死刑、または無期禁錮刑(首謀者のみ)
・外患誘致罪
外国(政府や軍隊、外交使節など公的機関)と共謀し、日本に対して武力行使を誘発させる犯罪
刑罰:死刑
・外患援助罪
外国から武力行使があったときにそれに加担、協力し、外国と共に日本を攻撃する犯罪
刑罰:死刑、無期懲役、または2年以上の懲役
・現住建造物等放火罪
人が住居として使用しているか、人がいる建物、電車、船などに放火する犯罪
刑罰:死刑、無期懲役、または5年以上の懲役
・激発物破裂罪
火薬など爆発するものを用いて、人が中にいることが明らかな建物、電車、船などを爆発させる犯罪
刑罰:死刑、無期懲役、または5年以上の懲役
・現住建造物等浸害罪
水を溢れさせて、建物、電車、汽車などに損害を与えたり、中にいる人を溺れさせたりする犯罪(池やダムを破壊して洪水を引き起こすなど)
刑罰:死刑、無期懲役、または3年以上の懲役
・汽車転覆等致死罪
電車や船などを転覆させたり破壊したりした結果、乗客などが死に至った場合に適用される可能性のある犯罪
刑罰:死刑、または無期懲役
・水道毒物等混入致死罪
水道に毒物を混ぜた結果、その水を使用した人が死に至った場合に適用される可能性のある犯罪
刑罰:死刑、無期懲役、または5年以上の懲役
・殺人罪
人を故意に殺す犯罪
刑罰:死刑、無期懲役、または5年以上の懲役
・決闘殺人罪
決闘を行い、相手を死に至らしめる犯罪
刑罰:死刑、無期懲役、または5年以上の懲役
・組織的な殺人罪
組織的に殺人をする犯罪(オウム真理教の地下鉄サリン事件を機に制定)
刑罰:死刑、無期懲役、または6年以上の懲役
・強盗致死罪
強盗を行った結果、人を殺したり、死んでしまったりした場合に適用される可能性のある犯罪
刑罰:死刑、または無期懲役
・強盗強制性交等致死罪
強盗の際に、強姦などを行い、その結果人が死に至った場合に適用される犯罪
刑罰:死刑、または無期懲役
・爆発物使用罪
治安を乱したり、他人の身体、財産を侵害するために爆発物を使用する犯罪
刑罰:死刑、無期懲役/無期禁錮、または7年以上の懲役/禁錮
・航空機強取等致死罪
暴力や脅迫などを用いて相手方の抵抗を抑えた状態で、飛行機を乗っ取り、その際に人が死に至った場合に適用される可能性のある犯罪
刑罰:死刑、または無期懲役
・航空機墜落等致死罪
空港の設備を破壊したり、飛行中の航空機を何らかの方法で墜落させ、人を死に至らしめる犯罪
刑罰:死刑、無期懲役、または7年以上の懲役
・海賊行為致死罪
海賊行為によって人が死に至った場合に適用される可能性のある犯罪
刑罰:死刑、または無期懲役
・人質殺害罪
人質を取り、金銭を要求したり、逃走ルートを確保したりするなど、強要行為をしたときに、人質を殺害する犯罪
刑罰:死刑、または無期懲役
都会の電車内で暴れるよりは限界集落で放火する方が確実
外患誘致罪(日本において死刑以外の刑罰を有さない唯一の罪名であり、ゾルゲ事件では一度は検討されたものの、未だかつて適用事例はない)や内乱罪、組織的な殺人などはかなり大掛かりな犯罪なので死刑を目的として一人で実行するにはなかなか難しいし、爆発物使用材や激発物破裂罪、水道毒物等購入致死罪なども爆発物や有毒物の入手ルートや取り扱い等に関してある程度の知見がなければそう上手くはいかないだろう。
かといって殺人罪や強盗致死罪で2-3人以上というのも、なんだかんだ抵抗されたり邪魔が入ったり緊張などで手足が震えて上手く攻撃できなかったりして、目的を果たすには至らず終わる可能性が高い。それに、いくら自分が死刑になるためと言えども、人を斬りつけたり首を絞めたりするのはどうしても抵抗が湧くのではないだろうか。(死刑と同時に殺人行為そのものも目的であるサイコパス等を除く)
それよりは、老人ばかりが住んでいるような田舎の山奥の限界集落などに赴き、燃えやすそうな木造住宅に真夜中に火を放った方が、よっぽど高い成功率で死刑を勝ち取ることができるだろう。
ガソリンを撒いて、あるいは一定量の乾いた落ち葉をその場で調達するなどしてライターで火を着けるだけ。特別な準備は要らない。
住人の多くは高齢者だろうから夜ふかしはあまりしないだろうし、仮に見つかっても腕力的に抵抗されにくい。その点、都会の電車内で刃物を振り回すよりも遥かにリスクが小さい。
【重要】関係ない人の命を奪うのはやめよう
より確実に死刑になる方法について真面目に書いてみたが、そもそも自分勝手な思惑で誰かを道連れにしようだなんて発想は捨ててほしい。
自殺するのが怖いから殺してもらうだなんてふざけるのも大概にしてほしい。
自殺といえば飛び降りや飛び込み、首吊りや血管切断のイメージが持たれやすく、ゆえに痛く苦しく怖いものだと思ってしまいがちだが、クスリを大量に飲んで死ぬこともできるし、場合によってはそれで多幸感を得ながら死に至ることだってできる。
そもそも死刑は簡単には執行されない
先程挙げた「死刑希望者による事件」リストを見ていただければ分かる通り、死刑を望んで起こされた事件ですら死刑の要件を満たすに至るケースは全体の一部に過ぎないし、仮に死刑判決を受けることができたとしても、そこから時間を置かずに執行されるケースばかりではない。再審請求中は死刑が執行されないという不文律があるが、請求していないのに十年以上も執行されていない死刑囚もいる模様。
逮捕後、裁判で判決が出るまではおよそ数年、それから執行までさらに平均5年はかかる。つまり、死にたくても死ねない状況が7年くらい続く可能性が高い。もっと長くなる可能性も十分考えられる。
その間に「やっぱり死にたくない」と言い出す者もいる。それで上告するなどして死刑を免れた者もいる。しかし、一度でも死刑を求刑されるレベルということは減刑されても大抵は無期懲役が下限。すなわち、あとになって心変わりしても、外にはほぼ確実に出られない。(服役15年程度での仮釈放もあり得た一昔前とは異なり、現在無期懲役囚が仮釈放の許可を得るには最低でも30年以上の服役が前提である上にその門戸はかなり狭く、本人が如何に反省の態度を示していようとも身柄引受人の有無や遺族感情、社会に与えた影響などによって可否が大いに左右されるため、「死刑を目的とした無差別殺人」のような事件を起こした場合は仮釈放の可能性は極めて低いだろう)
また、死刑が執行されるかどうかは時の法務大臣(法相)の価値観などによるところも大きく、法務大臣が死刑廃止論者であれば就任中の執行はないだろう。
また、何十年も前から死刑制度は世界的に廃止の流れに向かっており、今後日本で廃止される可能性も十分考えられる。そうなると現死刑囚に対する執行は止まり、死にたくても死ねなくなるばかりか、もしかすると無期懲役囚と同様に扱われて日々労役が科されることにもなりうる。
以上から言いたいのは、死刑になることを目指して事件を起こたとしても死刑判決を受けるのは容易ではなく、また受けたとしてもある程度の期間は死を待たなければならないばかりか、その執行は決して保証されたものでもないということだ。
要するに、多くの場合、「非能動的な死」という目的に対して非合理的な手段である。少なくとも今の日本では…。
だが外に目を向ければ話は違ってくる。
手軽に死刑になりたいならば中国にでも行け
中国は死刑が多い。それは単に人口が多いからというだけではない。
死刑へのハードルが低いのだ。たとえ窃盗犯ですら死刑になりうる。
以下の図表では2018年における中国での死刑執行件数は1000+となっているが、実際のところ2000以上との見方が強く、毎年2-3000人ほどが死刑を執行されていると言われている。例えば薬物にはかなり厳しいので、現地で一定量を調達してから公安に発見してもらえば、高確率でミッションは達成されるだろう。
人口比からすると、これが日本ならば年間200人ほどが処刑されているということになる。2021年現在日本にいる死刑囚(約110人)の倍ほどにもなる。
さらに言えば、北朝鮮も有効な選択肢の1つだろう。カネはかかるが中国から列車などで入国できる。
実際の執行件数は不明だが、少なくとも処刑場が300以上存在し、韓国ドラマを観ただけで死刑になる国であることから、相当な数が執行されていると容易に想像できる。最近もNetflixで人気のドラマ「イカゲーム」の映像データを密輸した男が銃殺刑に処され、データが入ったUSBメモリを購入した高校生は無期懲役、映像を観た他の6人の生徒には5年の重労働が宣告された。学校の担任教師や校長も解雇され、北朝鮮の情報筋は「彼らが炭鉱に送られるか、農村部に追放されることは確実だ」との見解を示した。(あまりに狂っている)
ただしこの国では拷問も問答無用で行われるため、楽に死にたい人向きではないかもしれない。
彼らは果たして本当に「死刑になるために」人を殺そうとしたのか
京王線刺傷事件で、犯人の男はジョーカーの衣装を身に纏った。
一時的に自暴自棄になっていたのか、それとも長らく強い願望があったのかは知らないが、彼は死刑になりたいと本気で思っていたのかもしれない。しかしその思いと同時に、社会にインパクトを与えたいという自己顕示欲や承認欲求も少なからずあったのだろう。
「死にたいけど自分で死ぬのは怖いから」と死刑狙いの殺人を犯す人たちのほとんどは、死に方のレパートリー(オーバードーズなど)を知らないか、真剣に考えていないか考える余裕がないか、人を虐げたい欲求が強いか、あるいはただ事件を起こして世間を騒がせ注目されたいとか、恨みを抱く特定の誰かへの当てつけだとか、そういう未熟な動機に衝動的に突き動かされているだけなのだろう。
手っ取り早く殺されたい×有名になりたいならマフィアかテロ組織に喧嘩を売れ
2017年、酒に酔って色々喋る系のメキシコ人有名YouTuber少年(17)が、とある動画の中でメキシコのとあるマフィアのドンを侮辱する発言を繰り出し、それからしばらくして友人たちとパーティを楽しんでいたところ、武装集団が押し入り、15-18発の銃弾を浴びせられて死亡した。
ISもそうだが、メキシコマフィアは特にその攻撃性・残虐性の高さで知られる。メキシコなどに滞在してYouTubeなどでひたすら侮辱的な動画をアップしていれば、そのうちサクッと殺しにきてくれるだろう。
社会への不満が主要動機ならイスラム原理主義過激派に捕らえられろ
社会への不満を主要動機として当てつけ的に無関係な誰かの命を奪おうと事件を起こすくらいなら、もっと世界に目を向けてみてはどうだろうか。
2004年、イラクに渡った日本人青年(24)が現地で「イラクの聖戦アルカイダ組織」に捕らえられて生きたまま首を切り落とされた。この年には流行語大賞トップ10に「自己責任」がランクインした。
2015年にもIS(イスラム国)によって後藤健二さんや湯川遥菜さんなどが殺害されて大きく報道された。(もちろん彼らは決して望んでそうなったわけではないだろう)
言いたいのは、イスラム原理主義過激派が跋扈する危険地帯に足を踏み入れて捕らえられるのも一つであるということだ。渡航目的がなんであれ、結果としてこれらの事件同様、日本社会からバッシングを受けることになるだろう。そしてそれと同時に日本政府に損害を与えることにもなりうる。
だから、自分で死ぬのは怖いけど死にたくてたまらなく、社会への不満をぶつけたくて、そして大きな事件で承認欲求を満たしたいのであれば、こちらは手っ取り早くて比較的スケールの大きな手段と言えるだろう。
重要なのは、それでも死ぬのは1人だけであるということだ。
気持ちよく死にたいなら薬物を過剰摂取しろ
体験した者からは「虹色の雲の中でフワフワと浮かんでいる感覚」「人生において体感する全ての幸福感の総和を遥かに上回る幸福感が一気に押し寄せてくる感覚」「全細胞が射精する感覚」などとも語られる通称「麻薬の女王」ヘロイン、一度手を出したらほぼ確実に依存してしまうほど強力な快感に包まれるという覚醒剤などのドラッグを過剰摂取すれば、きっとある程度気持ちよくなりながら死ぬことができる。(最後の方は苦しいかもしれないが、多幸感は続くはずなので多分大丈夫)
凄まじい幻覚作用によりインスタントな悟りを開けるとも言われるLSDやマジックマッシュルームも併せて大量摂取すれば、色々悟りながら死ねるかもしれない。コカインなど、モノによってはただしんどくなるだけだったりするらしいので注意が必要だ。
いずれも、日本であっても手に入れようと思えば簡単に手に入るので、試してみよう。ただし錯乱状態に陥り他者に危害を加えるなどする可能性もあるため、人里離れた山奥などで摂取することを勧めたい。
死にたい×良いことしたいなら紛争地域に人命救助しにいけ
日本は世界でもトップクラスに平和な国とされる。
日本における10万人あたりの年間殺人件数は0.3人程度でありこれは世界最少クラスだ。
参考までに私が2018年頃に住んでいた南米コロンビアはその90倍ほどで、お隣のベネズエラの首都カラカスに至っては当時10万人あたり約90件。日本の300倍にもなる。(ベネズエラの犯罪監視団体OVVの調査)
世界のほとんどの国・地域は犯罪面で日本より危険であると言える。最近(2021/11)愛知県の中学3年生が学校で同級生を刺殺した事件が発生し、トップニュース級の報道がなされていたが、例えば銃乱射による大量無差別殺人事件が頻発するアメリカではそのような扱われ方はしないだろう。
シリアやアフガニスタンなどの紛争地域では民間人も殺害されるなど、悲惨な状況が続いている。
現地にいれば、彼らのような罪なき民間人を身を挺して救うことだってできるかもしれない。
誰かを殺して死刑になるのではなく、誰かを救って殺害されるという選択もあっていいんじゃないだろうか。もしかするとそこで命のかけがえのなさに気付いて、また生きてみようと思うに至るかもしれない。
死刑を望んで事件を起こそうとするような者の中に、どうせ死ぬなら誰かにとって為になることをして死にたいだなんて思う者が含まれているとはあまり考えられないが、念のために記載しておく。
【番外】刑務所に行きたくて事件を起こすくらいなら閉鎖病棟に行け
死刑にはなりたくないけど刑務所に行きたいという者は少なからずいる。(死刑囚は拘置所)
何年も服役した者が社会復帰するも身寄りもなく職も得られず社会の変化についていけず路頭に迷い、生活の安全などを求めて事件を起こして再び刑務所に戻るなどというのは決して珍しくない。
岡山駅突き落とし事件(2008)
被害:駅ホームから線路に突き落とされた男性1人が死亡
加害者:家出少年(19)
発言:「人を殺せば刑務所に行ける。誰でもよかった」
判決:懲役5年以上10年以下の不定期刑
東海道新幹線無差別殺傷事件(2019)
被害:新幹線内でナタで切りつけられた女性2人が重傷、止めに入った男性1人が死亡
加害者:無職男性(22)
発言:「有期刑になれば刑期を終えて出所し、必ずまた人を殺す」「刑務所で更生することはない」
判決:無期懲役(判決時に大声で万歳三唱)
しかし死刑囚が収監される拘置所とは違い、刑務所では刑務、つまり労役が科される。
「(たとえ生活保護を受給できるのだとしても)社会で生活していくのが苦痛で、かといって死にたくはないので事件を起こして刑務所に行きたい」のであれば、精神病院の閉鎖病棟に措置入院することをオススメしたい。
刑務所と同じく社会から隔絶された空間だが、大きな違いは労役がないということ。
基本的に自由時間であり、何もせず過ごしたい人にはピッタリだろう。
もちろんしっかり三食ついていて、刑務所では甘味のある食事はほとんど出されない一方で、閉鎖病棟では制限はあるものの購買で甘いお菓子などを自由に買うこともできる。
刑務所と同じく(こちらは作業療法士などによる)レクリエーションも色々あるし、運動会やカラオケ大会などのイベントもある。大抵の人はテレビを観たり将棋をしたりと、老人ホームのような暮らしを延々と続けている。統合失調症や双極性障害、認知症の患者が多い。
一方で刑務所とは異なり、状況によっては制限付きで外出・外泊することもできたりするので、なんとなく外の空気を吸いたくなったとしても安心だ。
また「閉鎖」という言葉が重い響きを放ってはいるものの、もちろん建築基準法などに違反しているはずもない。つまり窓などが閉ざされて採光が悪いわけでもない、一見普通の病棟だ。
閉鎖病棟への入院形態には主に3つ、本人の意思で退院できる「任意入院」、保護者などの意思で退院できる「医療保護入院」、そして都道府県知事による強制命令という形をとる、法的拘束力のある「措置入院」というものがある。こちらは本人や保護者などの意思がどうであれ、医師が許可を下さない限りは決して退院できない、
措置入院は「自傷他害の恐れが大きい」と判断されたときに適用される。例えば路上で叫びながら自分自身を傷つけたり自殺未遂したりすれば、保護されたあとに高確率で措置入院の運びとなるだろう。
措置入院は簡単には解除されないし、退院にあたっては無期懲役囚の仮釈放と同じく身柄引受人の有無なども物を言うので、30年以上入院している人も珍しくはない。
「この人はもう退院させてもいい」と判断される可能性を下げるために病院内で適度に問題を起こして精神障害者を装っておけば、ずっと措置解除されずに済むだろう。なお、措置入院の入院費用は基本的に各都道府県が負担するため、お金がなくても入院することができる。
なお人口1000人あたりの精神病床数は、この半世紀以上で世界の国々で大幅に減っている。その一方で日本はその流れに逆行しており、世界でダントツの1位だ。(ちなみにイタリアはゼロ)
これも一つの医療ビジネスであり、一気になくなることはないだろうから、追い出されることはまずないと言っていい。すなわち衣食住に困ることは一生ないので安心できる。(刑務所だと仮釈放なしの無期懲役でない限り、刑期満了で追い出されることになる)
刑務所に入るために殺傷事件を起こして落ち度のない無関係な誰かを悲しませるくらいなら、措置入院という選択があることも多くの人に知ってほしい。人に危害を加えなければ実名報道はされにくいため、家族などにのしかかる精神的負担も抑えられるし、知人友人に知られずに済む。(注目を浴びたいという動機が強いのであれば不適当な選択かもしれないが)
もちろん入院費用は税金で賄われるため口を大にして言えることではないが、最悪の事態が引き起こされるよりは遥かにマシだろう。
2021/11/30
コメント
死刑そのものにも合理性はないですけどね
論拠詳細はこちら→死刑に関するよくある勘違い
http://kanjo.g1.xrea.com/sikei.htm