【体験談】ダルクの薬物依存者の人たちの生々しい話を聞いてきた

体験

ダルクとは 

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ダルク(DARC)という施設をご存知だろうか?

ダルク(DARC)とは、ドラッグ(DRUG=薬物)のD、アディクション(ADDICTION=嗜癖、病的依存)のA、リハビリテーション(Rihabilitation=回復)のR、センター(CENTER=施設、建物)のCを組み合わせた造語で、覚醒剤、有機溶剤(シンナー等)、市販薬、その他の薬物から解放されるためのプログラムを持つ民間の薬物依存症リハビリ施設です。

引用元:全国ダルク

DARCでは、医療機関の連携などのもとに薬物依存者たちが共同生活を送り、ミーティング(セラピー)などを通じて、「薬物を使わないで生きる」ことを目指す。
全国で60ほどの運営母体が90施設を運営しており、参加者は毎日ミーティングに出席するなどしながら自分と向き合い、乱用防止に努めていく。

創始者の近藤恒夫氏は30歳のときに覚醒剤を覚え、39歳になった1980年に覚醒剤取締法違反で逮捕され、懲役1年2ヶ月保護観察付き執行猶予4年の判決を受ける。その後、アル中の牧師の協力もあってダルクを立ち上げた。

これを執筆しているのは2019年12月だが、近年では歌手のASKAや元プロ野球選手の清原和博、俳優のピエール瀧にアイドルの田口淳之介に元スノボ選手の國母和宏、10年以上使用していた沢尻エリカなどの薬物事案での逮捕が大きな話題となった。

薬物使用で6回逮捕された元俳優の清水健太郎、ダルクでスタッフとして働くも2019年11月上旬に4回目の薬物事案逮捕となった元タレントの田代まさしなどは、薬物依存からの脱却の難しさを体現している。

ダルクとの交流会に参加

先日、茨城県土浦市更生保護女性会主催の「ダルクとの交流会」に参加し、2施設のダルクの人々と交流する機会があった。

薬物依存者や保護司会/更正保護女性会、行政関係者などが集うその交流会は10年以上続いており、毎回100人以上が参加するという。

食事や会話といった単純な交流機会のほか、依存者たちによる和太鼓パフォーマンスや体験談の時間も設けられており、薬物依存者の生の声を知る場としての機能をも果たしている。

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交流会開始の2時間前に会場である公民館に到着し、保護司会/更生保護女性会の方々とともに会場装飾や食事運搬などの準備をこなした。

保護司会に所属する保護司は、少年院や刑務所から釈放された人たちに関わる様々な調整や保護観察などを主な活動とする、法務省所管の非常勤国家公務員(無給)である。全国で48000人ほどが活動している。平均年齢は約65歳、上限は75歳。任期は2年(延長可)。人材不足が深刻化している。

更生保護女性会とは少年の改善更生に協力することを目的とするボランティア団体であり、非行防止啓発のための集会を開くなどしている。全国に約17万人。

ダルクの人たちが到着

しばらくすると茨城ダルクと栃木ダルク(女性シェルター)の人たちがバスに乗って何十人もやってきた。なお、ダルクの敷地内にはいくつもの建物(古民家など)があり、彼らはそこで共同生活を送っている。

男性は最年少は10代から、そして30-40代を中心に60代くらいまで幅広く、女性はほとんどが20-30代であるように見受けられた。

席に着き、男女それぞれの和太鼓パフォーマンスが披露される。栃木ダルクからは卒業生も参加していた。週に1回は練習するらしく、太鼓の音・動き・掛け声など非常に迫力があった。
一心不乱に身体を激しく動かすことになるため、薬物を使用したい気持ちを一時的にでも掻き消す効果があるのではないかと思う。

男性陣は短髪ツーブロックでコワモテの人が多く、同じく短髪(金色)ツーブロでコワモテとされる私も少し緊張した。また、薬物使用のためか歯が抜けている人、胸のあたりからタトゥーが少し見える人もいた。
話しかけてみると見かけによらず親しげな人ばかりで、ダルクのことやダルクに至る経緯などについて教えてくれたりした。

身体のゴツい30代くらいのとある男性は、専門学校を出たあと職を転々とする中でドラッグに出逢い、刑務所を出たり入ったりしてきたという。

ダルクにも治療段階に応じてステップがあり、例えば初期施設と呼ばれる依存度の強い人たちのための施設では制限が多く、一人での外出や飲酒が禁止されているのだという。一方で社会復帰一歩手前の施設の自由度は高い。

そんな彼に、最近よく流れる薬物関連ニュースにどんな印象を抱くかと尋ねると、「ダルクに入ったらいいと思う。一人で依存症を克服するのは難しい」という答えが返ってきた。

そうしたニュースを見るとまた薬物をやりたくなったり気持ち悪くなったりする人もいるため、あえて見ないようにしている人もいるらしい。

体験談

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体験談のコーナーでは、壇上で4人の依存者が各20分ほど、それぞれの経緯やダルクについてなどを語った。

1人目…元裏社会の住人~覚醒剤依存~

1人目の方は、歌舞伎町の客引きにありがちなファッションと雰囲気の40手前くらいの男性だった。
若い頃から不良~暴走族~歌舞伎町の売人~ヤクザと、裏街道をひた走ってきたという。

売人をする中でクスリにハマったのか、クスリにハマったことを機に売人になったのかは忘れたが、気が付けば依存してしまったらしい。

そうして、クスリを辞めたいと何度も決心しては、辛いことがあるとまた乱用するということを繰り返してきた。

付き合っていた恋人に自分がクスリをやっていることを隠していた彼は、あるとき体調が悪くてずっと部屋にいた彼女に自分がクスリをやるのを見られたくなかったため「出て行け」と冷たく言い放ってしまったのだそう。

それが情けなくてたまらなくなった彼は「自分のことは自分で救うしかない」と決心。
しかし、その後も何度も繰り返してしまい、ダルクに入って今に至る。

カタギで働いて生活する人たちのことを馬鹿にしていたこともあったが、売人やチンピラから足を洗ってカタギの生活を送る中で感じた大変さに、かつて「こんな大人にはなりたくない」と感じていた父親の勤勉さや偉大さを思い知ったという。

2人目…元看護師~処方薬依存~

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2人目は、40代後半くらいの元看護師の女性。
シングルマザーとして2人の子供を育ててきた彼女の治療対象は「処方薬依存」。
看護師という職業柄、処方薬の入手は容易であったという。

疲労のあまりニンニク注射を職場から盗んでは乱用していたようだ。
量を増やさないと効かなくなり、通常は1日1本のところ、当時は4本くらいは打っていたらしい。
在庫が減っていることが病院にバレて、その際に肝機能が低下していることが発覚し、入院。

その後、理解のあった職場に復帰するも、ニンニク注射は手の届かない場所に隠されるようになり、その代わりに抗不安薬や睡眠薬、精神安定剤などにハマっていく。
やはりこれも量を増やさないと効かなくなり、10錠以上一気に飲むなどしていたという。

精神科に入院するも、完全に依存症になっていた彼女は「一生薬を飲めないなら死んだ方がマシだ」と思い、病棟を逃げ出してパチンコ屋に駆け込んだこともあったらしい。(ギャンブル依存も抱えており、かなりの借金があった)

薬が忘れられず、「お願いだから薬出して」と狂ったように叫ぶこともあったというが、当時のことはあまり記憶に残っていないらしい。

退院しても早速再開しては悪化し、また精神科へ。
精神科にダルクを紹介してもらい、訪問。

スタッフ(同じく依存者)らとハグをしたときに一気に安心感が押し寄せて涙を流し「自分の居場所はここだ」と感じるも3ヶ月で飛び出して母親の睡眠薬を大量摂取。

改めて「外にいちゃダメだ」と感じてまたダルクに戻り、半年目を迎える。

3人目…10代少年~風邪薬依存~

19歳くらいの男性。彼は会場にいた全依存者の中で一番若かった。

祖父母のもとで育てられた彼は高校3年の初め頃に風邪薬のブロンでキメられるということを同級生に教えてもらい、授業中や放課後などにキメまくってハマる。

その後大学に進学するも半年ほどで中退し、あるとき薬剤師の叔父にブロンの乱用がバレてダルクに入ることを迫られる。

それから1ヶ月、ダルクに入る前にできた彼女と外で一緒に過ごすという目標も生まれたことで、やりたい衝動もなく過ごせているという。出たあとは働きたいとのこと。

毎日ミーティング(セラピー)を重ね、恥をかきながらも自分のことを正直に振り返ることが功を奏している模様。

4人目…20代女性~大麻/合法ハーブ依存~

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20代半ば前後の女性。
複雑な家庭環境で育ち、高校時代に大麻と合法ハーブに出逢い、依存症に。
周りから乱用がバレて説得されたことを機に治療を開始。しかし治療中にも乱用を繰り返す。

「自分に優しい生き方」を目指してダルクでの治療の日々を送っている。
彼女の質問コーナーでは会場にいた多くの経験者たちからの励ましの声などが上がった。 

薬物問題への理解

私が以前滞在したことのあるコロンビアやメキシコではドラッグが蔓延している。

マリファナの香りが漂ってくることは日常茶飯事で、路上やクラブで簡単に手に入る。ホームレスにとっても名門大の学生にとっても馴染み深い。お気に入りだったカフェでも栽培していた。100人以上の浮浪者っぽい人たちがたむろして一斉にクスリをやっている世紀末感のある現場を見たこともある。

ハードドラッグのコカインとなると流石に手を出す人の数は一気に減るが、入手は同様に簡単。
規制が緩和されており、多少の所持や使用では処罰されない。

一方で日本の場合、そもそも使ったこともなければお目にかかったこともなく、せいぜい保健体育の授業か芸能人逮捕のニュースくらいでしか馴染みがないという人が大半のようだ。
薬物依存が身近でないことにより、現状あまり理解が進んでいない。

薬物依存は刑罰を与えても再犯率が高い。
平成21年版の犯罪白書によると、

覚せい剤取締法違反で裁判を受け、執行猶予の判決を受けて社会に戻った人のうち、ほぼ4人に1人(24.7%)が、4年以内に同じ覚せい剤事犯で再犯している

引用元:BLOGOS – 「再犯率65%」という誤解|覚せい剤はやめられる

もちろん4年以内に再度乱用してもバレなければ逮捕されないのだから、実際の数字はさらに大きくなる。

「薬物依存は罰を与えるべき犯罪ではなく、治療が必要な病気である」

こう認識すべきであるとの声が高まってきている。

刑務所や精神科に入って強制的にクスリを断っても、シャバに出て入手可能な状態になれば、仕事が得られなかったり人間関係が上手くいかなかったりといった辛いことがあった際に、また手を出してしまうーそんな人は後を絶たない。

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彼らのように薬物依存状態の自分に向き合って未来を考え、互いに支え合い励まし合うということを繰り返せば、少しでも状況は改善すると思う。

今日一日、薬物をやらない

体験談に耳を傾けるうちに、

「こうして他の人の薬物依存の話を聞いていると、依存症の彼ら/彼女らの中にはクスリの快感を思い出して誘惑されてしまう人もいるのではないだろうか」

と思ったが、こうして薬物に関わる話題にもちゃんと耳を傾けることで、誘惑への耐性をつけることができるのかもしれない。いくら情報などを遮断しようとしても、生活していればふとした拍子に誘惑の導線にお目にかかることだって何度もあるだろうから。

彼らは「今日一日、薬物をやらない」を目標に日々を過ごしている。

「今日一日、誘惑に負けなかった自分」を積み重ねていくうちに、「誘惑に負けない(負けにくい)自分」が築かれていく。「今日一日」でも「この1時間」でもいい。

建設的な未来のために、薬物以外の様々な害となる誘惑(暴飲暴食やスマホ中毒など)に対しても同様の心構えで向き合っていきたいものだ。

2019.12

コメント

  1. 薬物依存に限らず、全ての犯罪者に必要なのは処罰ではなく治療・救済なんですけどね

    • HATHAHATHA より:

      コメントありがとうございます!
      更生/改善の可能性があるならば、おっしゃる通りです。
      そしてその可能性がゼロ%であると言い切れるケースはほとんどないと思います。

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