コロナの影響で入社式もないままに3日間のリモート研修を終え、新規事業構想(オンラインサービス)に取り掛かった。
社長からフィードバックを時折受けては自分の思考の甘さを痛感しながら日々は流れた。
当社にはソフトウェア開発人員がほぼいないらしい。そこで、社長の知り合いが代表を務める、その方面に強いA社と提携しようという話になっていた。
他業務も並行してこなしつつ、事業開発は試行錯誤の中で少しずつではあるが進んでいき、社長同伴のもとにA社オフィスで代表の方にプレゼンをすることがある日決まった。
今振り返れば完璧とはほど遠かったが、ある程度の準備をした上で、その日を迎えた。
目覚めたのは、昼過ぎだった。
その10日ほど前に深夜から朝にかけて都内を徘徊して以来、朝に寝て昼に起きるという生活リズムがズルズルと続いていた。
そんなスタイルが続いていたのは、これまたコロナの影響によって、(朝に)出社する必要性がほぼなかったからだ。
ここまでは良かった。なぜなら商談は17時からなのだから。私が予定管理に使っていたEvernoteにも「17時 社長と話し合い」と記されていた。
まだ時間があるとはいえ、資料の微修正などもしておきたい。自社のオフィスに行くのはやめて、直接A社オフィスに向かうことにした。
そうして作業をしていた15時50分頃。社長から「着いたら電話ください」と連絡がきた。
まだ1時間以上前なのに気が早いな、と思いながらも嫌な予感が走った。
普段は見ないものの「業務に使われているGoogleカレンダーに記された予定を確認し、絶望した。
開始時刻が17時ではなく16時となっている。
どう考えても10分で間に合うはずがない。
\(^o^)/オワタ
まさにこの絵文字のような心境へと突き落とされた。
なぜこんなミスが起きたのか。実はその前日、私は社長と17時から話し合いをしてフィードバックを受けていた。そのときの予定を消し忘れており、それが私を勘違いさせたのだ。
慌てふためきながら急いで準備しつつ、社長に電話をかける。
私「あろうことか開始時刻を1時間勘違いしていました…」
社長「じゃあ今日は来なくていいよ。君がチャンスを失うだけだから」
社長はいつものように穏やかな口調でこう言った。
とはいえ、急げば20分ちょっとで辿り着けるはず。スーツに着替え、家を飛び出てタクシーを止めて、A社オフィスへと向かった。
やり取りしていた同僚からは「なんなら私も震え上がってるから、、検討を祈る、、」と返ってきた。
道中、社長に「16時20分頃に到着します」とメッセージを送ったところ「来る必要ありません」と返ってきた。
「今回の反省と今後の行動改善を提示してください。その内容次第ではプロジェクトから降ろします」
とりあえずタクシーはバカ高い上に案外時間を食っていたので途中で降りた。
来る必要がないとは言われたものの、ここはちゃんと足を運んで謝罪をした方がいいと思った私は、電車に乗り換えて再びA社オフィスへと向かいつづけた。
オンラインでメッセージを送るのは軽くて失礼と思ったので、小雨のパラパラと降る中、A社オフィス近くの路上脇に座ってパソコンを開き、A4一枚分くらいの反省文と行動改善指針をまとめた。それを近くのコンビニで印刷し、そこで買った封筒に入れ、A社オフィスへと足を踏み入れた。
今思えば、オンラインメッセージは失礼だと感じていながら、どうして紙に直筆ではなくパソコンで書いた紙をプリントするという選択に至ったのか。中途半端であり、不可解である。
8階以上あるビルディングの5階あたりがA社オフィスだ。1階のフロアで社長が出てくるのを待とうかと思ったものの、ビルの地下に駐車場があることを知り、もし社長が車で来ていたなら遭遇できないと思ったので、A社オフィスのフロアへとエレベーターで上った。
フロアに到着し、少し歩くと、社長の声が聞こえてくる。一瞬だけ、A社社長の方と談笑している社長の姿が目に映った。こちらには気付いていないようだ。一旦身を引いた。
社長がA社社長にどう説明しているのか分からない。「新卒一年目のバカが約束の時間を1時間勘違いした」なんて説明しようものなら、A社社長に「お宅の社員さん、大丈夫なの?」と感じさせることになる。だから恐らく「急な体調不良で来れなくなったらしい」などと無難に誤魔化したのではないかと想像した。だとすれば、私がここにいることをA社社長に知られようものなら、社長の顔に泥を塗ることになりかねない。
結局、私は帰ることにした。社長がこのビルのどこから帰るのかも分からないし、下手に遭遇しても逆に状況が悪化する可能性があるし、手紙を渡すのは演技がかっていてわざとらしいからだ。トボトボとA社オフィスを離れ、電車に乗った。
一番手痛いのはこの日の貴重な機会を逃したことではなく、今回信頼を失ったことで今後チャンスを得にくくなるであろうことだった。気分はまあまあ重い。
帰り道は「新社会人 失敗談」などとググってはNAVERまとめの笑えないエピソード集を読んで「彼らに比べればかなり軽い」と自らを勇気づけた。
そして終業時間頃に社長にメッセージを送った。(一部抜粋)
1.「予定の徹底管理」 これまで利用していたEvernoteでの予定管理をやめ、リマインダー機能もあるGoogleカレンダーを活用することで、予定の存在や時間について失念するリスクをなくします。また、予定を入力する際は、時間や場所に間違いがないか、入念に確認します。 その上で、前日就寝前および当日起床時にはその日の予定を確認し、漏れがないように努めます。 2.「時間に余裕を持った行動」 時間を勘違いするという愚行は、余裕を持って早い時間に集合地点にいれば回復できた可能性もあったこと、今後も交通渋滞や遅延など不測の事態が発生する可能性もあることを常に考慮し、重要事項においては一層、早め早めに行動すべく努めます。このような機会の場合、具体的には30分前には近くに到着する心づもりで臨みます。
また、資料に関しては実際にA社社長に見せる前に社長に目を通してもらって再度フィードバックを受けるべきであった。そのためにもまずは自社オフィスに赴いて社長に時間をもらうべきであったが、それを怠ったのも反省対象である。
その翌週、社長とオフィスで話す機会があった。
「次やったらクビね」
以来、大事な予定はGoogleカレンダーで通知設定しまくっている。
2020.06
コメント