新宿二丁目のゲイバーに行って知った世界

旅/紀行

2015年、大学1年の夏、地元の友人2人と新宿二丁目に行った。

言わずもがな、ゲイタウンとして有名なエリア。単純に、どんな場所なのか興味があった。

なお、治安が悪いという噂があったが、近年はそんなことはないようだ。  

雰囲気

二丁目が近付くにつれ、手を繋いで歩く男性カップルやゲイ向けの広告などが次第に増えてくる。

平日だったからだろう、人はあまり多くなかった。意外にも欧米人らしき人が多かった。

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新宿二丁目の様子は、その周辺とはやはり色々違っていた。

・男性だけが描かれた、性病予防を呼びかける看板

・ゲイグッズ(性玩具)やゲイビデオなどのお店

・店の名前や雰囲気のエロさ

・歩いている男性の女性っぽい仕草

 などが多く目についた。活気があった。

ミックスバー

二丁目に現存する一番古いというディスコ「NEW SAZAE(ニューサザエ)」に行く予定だったが見つけられず、諦めて別の店へ。

そこはいわゆるゲイバーだが、誰でも入店可という店だった。(ミックスバー)
二丁目はゲイのみ入店可の店がメインだが、ミックスの店も多いらしい。

店内には、恰幅のある30代くらいのゲイ男性、メディアにもたまに露出するという、ツケまつげが半端なく盛り盛りで厚化粧の「女装家」などがいた。

狭い店だったが、周りを見ると他の客は楽しそうにワイワイやっている。ここでゲイであることを公にしている人の中には、日常生活ではそれを隠してストレートとして振る舞っている人もたくさんいるという。そんな人たちも、ここでなら比較的自分らしく居られるようだった。

LGBTとSOGI

近年認知度が高まっている「LGBT」という言葉。

女性に性愛を抱く女性はレズビアン(L)、男性に性愛を抱く男性はゲイ(G)、男性にも女性にも性愛を抱く人はバイセクシャル(B)、心と体の不一致を感じている人はトランスジェンダー(T)。

しかし、セクシャルマイノリティとは、そんなシンプルなもんじゃないらしい。LGBTのシンボルは虹色だが、それだけ多様ということでもある。

ちなみに「LGBT先進国」タイには、18種類かそれ以上の性別があるという。

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また、あまり知られていない「SOGI」というものがある。Sexual Orientation and Gender Identity、つまり性的指向と性自認を意味する。

平たく言うと、性的指向とは、どの性別が好きかということ。ストレートの男が好き、レズビアンの女が好き、とか色々。

性自認とは、自分の心の性別のこと。体は女でも心は男の人とか、どの性別をも自認しないXジェンダーとか、色々。

これは結構誤解されている模様。そして、性的指向も性自認も、グラデーションの世界だ。

「オネエ」の意味

女装家の話によると、“オネエ”という言葉を人々は誤解しているとのことだった。

“オネエ”とは、本来は「オネエ言葉を話す人」という意味だったそうだ。つまり、ストレートだろうが何だろうが、オネエ言葉を話す人はオネエだったと。いわゆる女性っぽい話し方は威圧感がなくて柔和な感じがするから、好んで使われていたのだろう。

しかし昨今では「ゲイや女装家=オネエ」という図式が一般的に認知されている。メディアが視聴者からのウケをよくするために分かりやすく、ある意味乱暴な分類・表現をした結果、上の図式が出来上がったということらしい。

世の中、そういうモノが多い。

ゲイを自認したタイミング

その女装家は、ゲイであることを自認したときの心情についても語ってくれた。(きっとよく聞かれていることだろう)

ゲイであることに気付いたのは中学3年のときだったらしい。中学生はまだまだ視野が狭くて、残酷だ。つまり、ゲイであることが周りに知れれば、奇異の目で見られてイジメられる可能性が高い。

今年、一橋大学大学院でゲイの学生から同性愛の恋愛感情を告白された異性愛の男性が、別の友人らにその学生がゲイであることを暴露したこと(アウティング)をきっかけとして、ゲイの男性が心身に変調をきたし転落死した事件もあった。(一橋大学アウティング事件

性自認や性的指向とは多くの場合、センシティブなテーマであり、このようなリスクをはらんでいる。だから、彼/彼女も必死に周りに気付かれない努力をしたそうだ。興味もない一般的なアダルト本に目を通しておいて男子生徒たちと話を合わせる、といった具合に。

セクシャルマイノリティの人の葛藤なんて考えたこともなかった。当事者にしか分からない不安や苦しみがあるのだ。辛いことが色々あったのだろうけど、今を生きたいように生きているその人は、何だか輝いているように思えた。

ちなみに、“ホモ”という言葉はよくからかいに使われるが、これは好ましくない表現だそうだ。

一般化しきれるものではない

「男は、女はこういうものだ」という考えと同様に、「ゲイとは、レズとはこういうものだ」という固定観念を持つ人は多い。

確かに、生物学や脳科学の観点からしても、傾向としては男女の違いは確実に存在するが、それはあくまで“一般的な傾向”にすぎない。 

私もそれまでは「ゲイは男と女の両方の性質を兼ね備えているから感性が高いのだろう」というイメージが何となくあった。

余談ながら、高校時代以来、私が好きなイギリスの歌手ベスト3は、写真左から

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Dead or Alive の Pete Burns、Culture Club の Boy George、Queen の Freddie Mercuryなのだが、彼らは全員ゲイまたはバイセクシャル。

私はそのことを、彼らの魅力的な歌声や醸し出す雰囲気などにすっかり魅了されたあとに知った。そうしたセクシャリティは、彼らの感性の根源の要素として機能していたのではないか、なんて漠然と思ったものだった。

しかし、その女装家の話を聞いてから、「ゲイだから◯◯」というものはナンセンスだと考えるようになった。(もちろんゲイ以外も全部) 

「男と女」という枠組みの中にゲイがあるのではなく、男や女とゲイ(やその他の様々なセクシャリティ)は並列の関係にあるという認識の方がまだ実情に近いのではないか、と。

誰かが色眼鏡で見てしまうことによって、当事者の生きづらさが生み出されてしまいやすくなる。もちろん、傾向というものはあるだろう。しかし、特に性自認や性的指向はアイデンティティに直結しうるからこそ、このような画一的な決めつけは避けた方がいいと思った。何事もそうだが、個を見る姿勢が大切だ。

葛藤の結果

とは言いつつも、その方たちと話していて感じたことがある。

彼ら彼女らは多かれ少なかれ悩んできたはずだ。つまり、多くの時間、自己と向き合ってきたことだろう。

ゆえに、物事を深く考えている人の割合は、ストレートのそれよりは高いのではないだろうか、と。

「ゲイ=襲われる」という風潮

「ゲイ」と言えば「襲われる」というイメージを浮かべる男性は、体感的に結構多いと感じる。

しかし、もしそう思っているのなら、

・自分がストレートだとして、全ての異性を恋愛対象として見るのか?(誰にでも「好み」や「選ぶ権利」はある)
・自分がストレートだとして、欲望に任せて異性に乱暴しようとするのか?

といったことを考えてみた方がいいだろう。

NEW SAZAE

2ヶ月後、他の友人とNEW SAZAEに乗り込んだ。かなり分かりにくいところにあった。ここもミックスバーだ。

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NEW SAZAE のドア

店内では、ファンキーなロングヘアの年配の方に背中を押される形で、店内に流れる80年代ディスコソングの爆音に身を任せてひたすら踊った。

最初は恥じらいの気持ちがあったが、その方による耳元への頻繁すぎるアドバイスのお陰もあって、後半は思いのままに動いた。(唾がめちゃくちゃ飛んできた)

その日はたまたまマスターの誕生日だったようで、客はどんどん増えていき、普通の女性からゴッツイおじさん、筋肉質の女装家まで、幅広い年齢層多様なセクシャリティに囲まれて、同じ空間を共有した。その一体感は、何物にも代えがたい新鮮な感覚だった。

ちなみに友人はゴッツイおじさんに冗談交じりに何度も股間を触られていた。(服の上から)

ゲイバーの存在意義

ゲイバーは何のためにあるのか。

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テキトーに拾ってきた画像

ゲイバーは、先程も触れたように、ゲイたちの息抜きの場であると同時に、出会いの場でもある。その点は一般的なバーと同じだ。

ということは、ゲイの人たちからすれば、そのような場にストレートの人が行くのは基本的に望ましくないとも言える。彼ら彼女らは出会いを求めているのに、出会いにならなくなるからだ。

二丁目が有名になったことに伴う私たちのような観光目的の客の増加は、それを嫌ったゲイたちの二丁目離れを引き起こしてきたらしい。また、男に言い寄られる心配があまりないという理由で、女性客も増えているという。まあいずれにせよ、それで繁盛している店もあるわけであるし、ミックスバーなら問題ないはずだが。

観光目的で行く際には、マナーとして事前の予習が不可欠だと思う。私も予習をして臨んだが、もっとしておくべきだったと感じた。

2015.08-10

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